一割

新居に越してきて2ヶ月経った。毎朝、3Fに住んでいるヤンママと階段ですれ違い、毎夜、送迎車に乗って帰ってきた婆さんと出くわす。両人とも、こちらが挨拶しても返事をしてくれない。先日書いた野球少年も相変わらず挨拶を返してくれないので、おれの声または容姿に問題があって、返事を返してくれないのだろう。
新居の周辺にはコンビニがなく、一番近いスーパーも徒歩15分のところにある。昔からそこに存在しているような2階建ての古いスーパーで、いつも同じお婆さんがレジに立っている。品物の値段があまり安くないので普段使いはしていないが、20時を過ぎるとお惣菜が安くなるので、夜にフラフラと立ち寄って、惣菜と酒を買ったりする。行くたびに惣菜と酒ばかり買って、同じお婆さんにレジを打ってもらうので、このお婆さんからは「自炊せず酒ばかり呑むダメ人間」だと思われているかもしれない。
お婆さんは鼻がつまったような声で、いつもカゴを置くと同時に「一割ありますか」と聞いてくる。はじめのうちは何のことかわからず「ないです」と適当に返していたのだが、何度もレジに並んでいるうちに、どうやら「一割引のクーポン券」を持っているかどうかを聞いているのだということがわかった。一割引のクーポン券をどうやったらもらえるのかわからないが、何にせよ「一割」では初めてのお客さんには伝わらないと思う。「一割『券』」と券をつけるだけで容易く伝わると思うので、先日その旨を「お客様の声」ボックスに投書してみた。しかし、それに対する返事は今の所ない。おれの声または容姿または筆跡に問題があって、返事を返してくれないのだろう。