昼の飛田新地は大半の店が閉まっているが、営業中のお店もちらほらある。明るいうちに店の中から婆に「見て見て〜」と呼び込みされるのが新鮮だった。通りを歩きながら、ライティングされた店内を覗き込むと、中は「①婆と嬢」「②婆のみ」「③嬢のみ」「④誰もいない」の4パターンに分けられる。①のパターンは二人が座っていて、婆が距離のあるうちから大きな声で通行人を呼び止める。初見の客に対してはとても社交的で「見てって見てって、かわいいよかわいいよ」と笑顔で話しかけてくるが、2度目に店の前を通ると「迷ってないで決めな〜」と、言葉は優しいものの若干不穏なオーラを出してくる。3度目には顔を覚えられ、いよいよ「あんたら何ウロウロしとんの」と窘めてくる。しまいには二人で歩いている我々に「別々に歩きいや」と、行動パターンにまで口を出してくるので笑ってしまった。婆が社交的なうちに飛田新地を一周するには、一筆書きですべての道を回れるルートを開発する必要がある。②のパターン「婆しかいない場合」は、嬢が接客に出ているため呼び込みも何もあったもんじゃない。だから中を覗いたところで何も話してはくれないし、こちらの視線なんか無視して、老眼鏡かけて数独なんかやってたりする。③のように婆がいない場合、嬢は伏し目がちに挨拶してくるだけで何も起こらない。④は赤い部屋の中にぬいぐるみが置いてあるだけだった。
メイン通りと呼ばれる道は昼間でも多くの嬢が店に出ていて、道の両脇からひっきりなしに呼び込みの声が飛んでくる。脳の処理が追いつかない。左右を交互に見ながら駆け足で通り抜けようとしたところ、デビュー当時の井上和香のようなビキニの女性が網膜に一瞬だけ映り込んだような気がしたが、西成の路地裏に落ちていたグラビア雑誌の表紙がフラッシュバックしただけだと思う。